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歯周組織再生剤リグロス

歯周病が進行すると、歯を支える骨が減ってしまいます。

これまでは減った骨を増やすことは、自由診療だけで使える薬である「エムドゲイン」を使ったり、保険の効かない骨補填剤や膜を使った歯周再生療法しか手段がありませんでした。
保険診療では、再生療法はできなかったのです。
ところが、最近保険診療て使える歯周組織再生剤である「リグロス」が発売されまして、保険診療で歯周病の治療を受ける方の治療の選択肢が増えることになりました。
リグロスは、阪大大学院の村上伸也教授が開発した薬で、bFGFという細胞増殖因子が主成分です。
身体の組織に傷ができると、周りの組織から細胞が増殖し、毛細血管が入り込み、新しい若い組織ができて、傷が修復されます。この過程で、組織修復を促すシグナルとして働いているのがbFGFです。
このbFGFを人工的に作用させることによって、積極的に組織修復をしようというのがリグロスです。

文献によれば従来あったエムドゲインよりも効果が高いという結果も出ているようです。

リグロスを使っても、いくらでも骨が再生するわけではありません。

歯槽骨の再生には、細胞増殖のためのシグナルに加えて、形態的な足場が必要です。

垂直性骨欠損という、局所的に骨がなくなっている場所にだけ、歯槽骨の再生が起こります。

山を作ることはできないけど、穴を埋めることは出来るということなのですが、わかりますでしょうか?

ですから、リグロスの使用には、適用条件が定められていて、「本剤は、歯周ポケットの深さが4mm以上、骨欠損の深さが3mm以上の垂直性骨欠損がある場合に使用すること。」とされています。



しかし、いままでは保険診療では垂直性骨欠損を改善させるには、骨を削って形態を整えるか(骨の支えは減ります)、骨欠損を残したまま歯茎が引き締まってポケットが浅くなるのを期待する(ポケットは再発しやすい)しかなかったので、そういう病態を抱えた人には朗報と言えるでしょう。

当院でもすでに数名の方にリグロスを使用した歯周再生療法を実施しています。歯肉剥離掻爬術の費用に加えて、リグロスの費用が数千円かかります。